清水良雄「絵本と芸術家」——『赤い鳥』表紙の画家、燃やされたはずの油絵をふくやま美術館で初公開。疎開先は福山・戸手

アート・デザイン

秋季所蔵品展「絵本と芸術家―清水良雄を中心として」のポスター。左が《春の庭》、右が《ボビィと卵》(ふくやま美術館)
[公式公開情報/報道の公開資料に基づく引用]※著作権は原権利者に帰属。掲載に関する指摘は確認のうえ削除・訂正します。

ふくやま美術館の展覧会ページによると、秋季所蔵品展「絵本と芸術家―清水良雄を中心として」が12月13日(日)まで開かれている。主役は、大正の児童文学雑誌『赤い鳥』の表紙をほとんど描いた洋画家・清水良雄(1891〜1953)。焼かれてしまったと思われていた油絵がまとまって見つかり、今年度美術館に寄贈された。その作品が初めて公開されている。

『赤い鳥』は清水の絵ありきで始まった

『赤い鳥』は1918年、夏目漱石門下の鈴木三重吉が創刊した。創刊号に芥川龍之介の「蜘蛛の糸」が載ったことでも知られる。美術館の展示目録によると、三重吉は「君が絵を引き受けてくれるなら童話童謡雑誌を出そうと思う」と清水に相談し、清水は二つ返事で引き受けた。全196冊のうち163冊の表紙を清水が描いている。

三重吉は芥川の文章にも手を入れるほど編集にうるさかったが、清水の絵には一切口を出さなかったという。清水自身は「子どもだからこそ油絵を描くのと同じに打ち込む」ことを心がけていた。会場には、広島市立中央図書館が持つ『赤い鳥』の口絵原画《月夜》《ボビィと卵》も並ぶ。

清水良雄《ボビィと卵(『赤い鳥』口絵原画、第15巻第6号)》1925年、広島市立中央図書館
[公式公開情報/報道の公開資料に基づく引用]※著作権は原権利者に帰属。掲載に関する指摘は確認のうえ削除・訂正します。

文展の特選画家でもあった

挿絵の印象が強い清水だが、東京美術学校で黒田清輝や藤島武二に学び、1917年から1922年までに文展・帝展で特選を4回受け、1927年には師の岡田三郎助や藤島武二らと帝展の審査員も務めた。ところが挿絵以外の絵はほとんど知られていなかった。亡くなったあと、代表作数点を除いて遺作はすべて燃やされたと伝えられてきたからだ。

遺作を引き継いだのは、弟子で絵本作家の甲斐信枝。先輩画家の辻永に相談して代表作以外は燃やしたと語っていたが、すべては処分できなかったらしい。今回、1915年の第9回文展に出した《無花果の秋》を含む油絵が見つかった。《無花果の秋》は木枠から外して丸めた状態で傷みが激しく、修復してからの初公開になる。

疎開先は今の福山市・戸手

福山で開く意味はここにある。清水は1945年、戦禍を避けて広島県芦品郡戸手村(今の福山市)に疎開し、戦後もそこに住み続けた。至誠高等女学校(今の県立戸手高校)で図画を教え、広島市で出た児童雑誌『ぎんのすず』の表紙も描いた。原爆のあとの広島で、子どもたちに希望を届けようと教師たちが作った雑誌だ。

展示には、戸手の暮らしを描いた《戸手村画巻》、戸手高校に今も飾られている《風景》(1952年)、亡くなる年の《芦田川風景》(1953年)も入っている。1954年1月、清水は「いい絵が描きたい、それにはもう少し長生きしたい」と言い残して戸手村で亡くなった。

佐藤忠良、脇田和、元永定正の絵本も

後半は、本業が別の芸術家が手がけた絵本の紹介だ。「おおきなかぶ」の絵を描いた彫刻家・佐藤忠良、『プークマ ウークマ』の脇田和、谷川俊太郎と組んだ『もこ もこもこ』の元永定正。絵本と、それぞれの彫刻や油彩を並べて見られる。出品リストでは「絵本と芸術家」の展示は31点、参考資料が32点。

観覧料と関連イベント

  • 会場:ふくやま美術館2階 常設展示室(福山市西町2-4-3、JR福山駅北口から西へ約400m)
  • 時間:9時30分〜17時。11月21日(土)は19時まで
  • 休館:月曜(11月23日は開館し、24日が休館)
  • 観覧料:一般310円、高校生以下無料
  • ギャラリートーク:11月7日(土)14時〜。対話型鑑賞会「ふくふくおはなし美術館」:11月21日(土)14時〜(どちらも観覧券が必要)

同じ館では特別展「千住博展」(一般1,500円)も12月13日まで開いている。

どう見るか

子どものころ絵本で見た絵が、実は文展の特選画家の仕事だった、というのは素直に驚く。挿絵が「子ども向けの絵」として一段低く見られがちなことに、この展示ははっきり異を唱えている。そこがいいと思う。

そして、その画家の最後の10年が福山の戸手にあったことは、地元でもあまり知られていないはずだ。燃やされたと思われていた絵が残っていて、しかも福山の美術館に収まった。千住博展を見に行くなら、2階にも必ず寄ってほしい。310円でこの話に触れられるのは安い。

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